一度の保証(短編集)

《貞司》


愛子は、俺が予想していたよりも遥かに驚いているようで、固まっていた。


俺の手に持たれたままの愛子への愛の証 ピアスを、俺は、愛子が、強く握りしめている手に優しく触れ、開けピアスを渡そうとした。


開けた手を見た俺は、ピアスを置こうとしていた手を止め言う。


「愛子?今日、体調でも悪かったのか?」


愛子は、やっと今気をとりもどしたかのように、はっとし、状況を把握した。


「あっ、えっ、これは…
その… 薬なの」


「そうだったのか、無理させて来させてたんだな…
すまない」


「いいのよ」


愛子は、俺を安心させるよう笑顔を向けた。


「はい、ピアス。
この薬ちゃんと飲んどけよ。俺、飲ませてやるよ」


俺は、愛子の手の中の薬とピアスを置き違えると、薬の封を開け、さっきコンビニで買ったお茶と、薬を愛子に渡した。


「今は いいの」


「でも ちゃんと元気になるように薬はしっかり飲まないと…」


「食後に飲まないといけないから…」


「おっ!そっか!そうだよな!」


「うん。でもありがとうね。貞司」


「礼を言うのは俺の方だよ!今日、来てくれてありがとうな愛子」