一度の保証(短編集)

彼女は、あたしに会釈し、軽くはない足取りで帰って行った。




あたしは、裕馬を見る。




「裕馬?」




「ん?」




裕馬の顔を見て、あたしは今まで一番素直に言う。




「裕馬?他に好きな人がいるんなら そっち行っていいねんで?」




裕馬は、特に表情を変えずそれどころか優しく笑いかけ言う。




「どこいくん?いくわけないやん」




彼女から裕馬の香水の匂いがした、裕馬の今日の昼間の相手は、彼女だったんだとすぐ分かった。




それに、裕馬の笑顔が少し他とは違うことくらい気付く。




「ほんとに、無理せんと。好きな人ができたなら仕方ないんやし」




あたしも、裕馬に劣らず優しい笑みを向け言う。




「留衣ちゃん?
好きになりかけたんと愛してるんは違うやん!
俺は、留衣ちゃん 愛してるし、他の子と一緒にいるんなんて考えられへんで?」




たぶん 嘘じゃないと思う。




好きになりかけた。かぁ〜




「裕馬?そこは、好きと愛してるは違うってゆうんじゃないん?
なりかけたって…」




あたしが、呆れて言うと、裕馬は、微妙な笑顔に変わった。