質問された教師ですら、世界史の資料を片手に固まっていた。

一体彼が何を言っているのか。
本気なのか、冗談なのか。
今のところ定かではない。

「あっでも、世界史の先生やなくて日本史の先生に聞かなアカンか。」

言った後、少し笑っていたので冗談だったのだろう。
静まり返った教室に甲斐君の低く、しゃがれた声だけが響いた。

そして再び、寝た。

これが大阪人のいわゆるボケというものなのだろうが、笑えなかった。

全くもって笑えなかった。

迫力に圧倒されたのか単に呆れてしまっただけなのか、その後、世界史の教師が甲斐君を注意することはなかった。

僕は初めて板書する事を忘れて、眠り続ける甲斐君をずっと見ていた。