僕が岸という名字だという事。
転校生が甲斐という名字だという事。
この学校の席順はあいうえお順だという事。
このクラスに加藤だとか、加納だとかいう男子がいない事。

それら全てが重なり、たった今、このただならぬ雰囲気の転校生は僕の前の席に座っている。

後ろから見る彼の背中は大きく、やはり迫力があった。
刈り上げられた部分が想像していたよりも短く、綺麗に整えられていた。

サングラスを外すと意外と可愛い目をしていたとか、後姿は美人
なんだけど前から見るとガッカリしたという話をよく聞くが、彼の全容を知っている僕にその期待はない。

彼は後ろから見ても前から見ても怖いのだ。
ある意味、裏表ない人。

裏表のない、怖い人。