当たり前だが夏目涼はもういない。 授業終了のチャイムが鳴るのとほぼ同時に校庭から姿を消した。 今は部活動に励む生徒たちがいるだけだ。 野球部やソフト部などの掛け声が聞こえてくる中、あたしはふと考えた。 何かを忘れている気がする。 それが何なのかを思い出せない。 けれどすごく大事な用事だったような――――… 「っ!!」 バンッと勢いよく机に手をついて立ち上がる。