「………だろうが」 「ん?」 すると夏目涼は足を止めた。 それに合わせてあたしの足も止まる。 夏目涼は何かを思いつめたように前を向いている。 あたしはその顔表情を見るべく覗き込んだ。 「…俺がいるだろうが」 夏目涼の瞳があたしを捉えた。 それは一瞬だった。 「………っ」 あたしはその吸い込まれそうな瞳から目を逸らせなくなっていた。 暫し見つめ合う。 すると夏目涼の瞳がフッと優しさを帯びたように見えた。