しかしあたしはそれで慌てるほど自分自身を失ってはいなかった。 今のあたしの心境は今までにないくらい怒りで満ち溢れているのだ。 「…そうだね」 思っているよりも冷静な自分に自身が驚いてしまった。 どうなってもいい、などと投げやりになっているわけではない。 ただなんとなく、こうして相手にしてくれるだけで嬉しくなってしまったのだ。 夏目涼の手に力は篭っていない。 いつでもあたしが抜け出せるようにワザとしていることがバレバレだ。 それがまた妙にあたしを苛立たせる。 「やりたきゃやればいいよ」