左手だけを掴まれている状態から見て、あたしを本気で襲う気はないんじゃないかと考える。 だとしたら無意味に騒ぐのはバカみたいだ。 けれど仮に両手を固定されていたとしても、あたしは騒がなかっただろう。 「…何すんの」 あたしは小さく問う。 じっと彼を真っ直ぐに見つめる。 彼は相変わらず無表情。 やっぱり何を考えているのか分からない無機質な声で言う。 「…襲われても文句ない状況だろ?」 その言葉に胸がドキリと音をたてる。