あの雨の中、寄り添ってくれた彼の面影が見つからない。 それが酷く哀しく感じ、同時に怯えた。 少し近づけた気になっていたのはあたしだけだったのだろうか。 全部全部、あたしの一方的なものであったのだろうか。 言葉が見つからない。 何を言葉にしたらいいのか分からない。 そんなあたしに彼は言ったのだ。 「帰れ」 そう、それは酷く冷たい温度だった。 色もなければ温かみもない。 口から出た言葉なのかすら危ういと思ってしまうほど、その言葉は冷たくて怖い。