「………っ」 初めて見る、彼の怒りに満ちた表情。 ゾッとした。 鳥肌がたった。 怖いと思ってしまうくらい、彼は怒っていた。 「あ、の……」 「その手首のは何だ?」 「え…っと…」 言葉が出ない。 いや、出したくないのかもしれない。 さっきまでの出来事を現実と思いたくない、一種の現実逃避。 いつまでたっても話そうとしない、あたしに追い討ちをかけるかのように夏目涼は言った。