瞬間、鋭い痛みが体中を駆け回った。 あまりにも顔を顰めたもんだから、夏目涼は驚いて手を離した。 あたしは掴まれた手首を隠すように、胸の前で合わせる。 ―――見られた。 見られた。 気づかれた。 紛れもなく。 「それ…どうした…」 激しい雨音の中でも聞こえた。 地響きのような、彼の低い低い声が。 あたしはその声にハッとして顔を上げる。 彼を見る。 その表情はあたしでも分かるくらい、怒りを滲ませていた。