すると夏目涼は相変わらず無機質な声質で、 「鞄」 一言そう言ってはあたしに差し出してきた。 あたしは慌ててそれを受け取る。 「あ、ありがとう…」 慌てすぎて鞄を忘れてしまったらしい。 ぜんぜん気づかなかった。 夏目涼はあたしを見ていた。 さっきと違って先輩ではなく、あたしを。 なに…?