悩んでもしょうがない。 ただ名前を呼んでしまっただけなのだ。 それ以上の理由はない。 彼はまだあたしを見ている。 あたしの存在を認めてくれている。 だからあたしはにこりと笑った。 笑ったまま言った。 「…またね」 それだけ。 たったそれだけの言葉。 〝またね〟 誰かが「またね」は「また明日ね」の略だと言っていたことがある。 あたしはその意味を込めて言ったのだ。