「というかお前なぁ…タオルはなかったのか?」
「あるわけねぇだろ」
「まぁいきなりだったからな」
そう言うと、先生はビショビショに濡れている夏目目掛けて鞄の中にあったタオルを投げた。
頭から足先まで水でびしょ濡れになっている夏目涼。
その姿から察するに、この鍵はプールのものだろう。
「…っち」
苛立ちを一切隠すことなく、投げられたタオルでワシャワシャ頭を拭く夏目涼。
あたしはそんな彼を横目に思った。
逃げよう。
八つ当たりなんかされないだろうと思うけれど、何だか傍にいることが恐ろしくなったあたしはとりあえずここから出ようと思った。

