去年の今頃は、秋に向かって少しずつ涼しくなっていたのに今年はまだまだ暑い。


近所の公園で二人で閃光花火したの、覚えてる?

夏の終わりにするそれは、妙にけだるく重苦しくて、終わっていく夏がいやに淋しく感じた。

でも儚く散らばる夏の花は、目を奪われるくらい綺麗でやっぱり好きだなと思った。



君と向かいながら閃光花火に火をつけるとどちらともなく話すのをやめて、火種が落ちた瞬間キスをした。
お互い恥ずかしくて少し気まずくなったよね。


来年も一緒にやろなと耳を赤くして私の手をひいてくれた。
どっちを?とからかうとアホと少し笑った。



あれからもう一年か。はやいね。
長かった私の髪の毛が肩ぐらい短くなって、君の髪がほんの少し長くなった。
そんな程度しか見た目は変わってないのに、どうして中身はこんなに変わっちゃったのかな。


何も言わなくても想ってることが手に取るようにわかったあの頃。
誰がみてもお互いを想い合ってた。


それなのに喧嘩は増えるばかりで、自分をエゴ一方的にぶつけ合うだけの不毛なやり取り。

そんなのお互いを傷付け合う行為でしかないのに。



ベランダの窓を開け、腰を下ろした。


少し汗ばむ体で夏を感じながら君の帰りを静かに待つ。
いつもなら駅に着いたときに電話をくれるが、今日はうんともすんとも言わないその携帯を隣に置いた。もし君が電話をくれたらすぐ出られるように。





時計の針は11時をさしていた。

やっぱり帰って来ないかとため息をもらし、一緒にやろうと思って買ってきた閃光花火とバケツを手に取ったときガチャリと音がした。



振り返ると少し息が乱れている君がいた。


アキと名前を呼ぶとただいまとわらったから、おかえりと返した。


それ何?と右手にぶら下がっているビニール袋を指すと、閃光花火と答えた。

スーパーはしごしてたらこんな時間になったとはにかみながらソファに腰を下ろすアキが愛しくて、そういえば一年前もこんな気持ちだったなぁと思い出した。



私も買っちゃったよと閃光花火を見せると覚えてたんやと嬉しそうに笑う君の傍に座る。どちらともなくした甘いキス。

久しぶりに交わしたそれは傷ついた心に染み込んで、傷を癒してくれてる気がした。