あのときリンが死んでなかったら、きっと今頃リンはトリマーになっていて、俺はスーツを着てここに帰って来ただろう。
俺とリンの薬指には揃いの指輪。
手を繋ぎながらパンダ公園で夕陽を見る。
お互いの親に挨拶して、婚姻届を出して、結婚式を挙げて、二人で住むんだ。
そんな遠くない未来をずっと前から描いていた。
だけど彼女に触れることすら出来なくなったいま、それは永遠に届かなくなった。
目を凝らしても見えないくらい、それは遠くの遠くに。
いつか、あんなに好きだったのにと言える日が来るのだろうか。
死んでしまった君を忘れる日がいつか来て、君じゃない他の誰かを好きになるのだろうか。
いまはそれが怖くてたまらない。
だから、ずっとずっとこれから先も、毎年必ずここに帰ってくるよ。
一年に一度だけ、君に逢える日。
これから先も、夏を待ち侘びるんだ。
むせ返るくらい暑いこの日を、ずっとずっと。