席に戻ると彼は用事が出来たらごめんと言って帰って行った。きっと私に気を使ってくれたんだろう。つくづく優しい人。
その優しさはいままでに感じたことがないくらい私の胸を強く締め上げた。
温くなったコーヒーを飲みながら思い返すのはユウトのこと。つくづく最低だなあと思い少し笑ってしまった。
久しぶりに聞いたユウトの声はあの頃のままで少し安心した。ユウトに名前を呼ばれた瞬間、心に流れ込んできた暖かくて心地好いものからはどうしても目を背けれなかった。頭でいろいろ考えても結局は心なのかな。
結局私は甘えたっぱなしの私をずっと支え続けてくれた人ではなく、一年そこら付き合った男を選ぶのだ。
理由はたった一つ、好きだから。
そこまで考えるとユウトに電話をかけていた。もしもしと聞こえると心の奥のほうがキュンと音をたてた。
家で待ってるそう告げると電話を切った。
ご飯を作って待っていよう。
最後に二人で食べた夕飯はハンバーグだった。ユウトはおろしポン酢が好きだったな。あとは真っ白なお米を炊いて、わかめと豆腐のお味噌汁。そうだユウトが好きだったビールも冷やしておこう。喜んでくれるかな。でもアメリカ帰りならもっと煮物とか和食がいいかな。
そんなことを考えていると自然と笑っていた。
心はどこまでも正直なのだ。



