だけど三年という月日はあまりにも長すぎて、彼との紙切れ一枚の約束は薄っぺら過ぎた。
そんなとき今の彼が現れた。
私は彼の優しさにに甘えたのだ。
散々甘えたのにユウトとの約束の三年を目前にして迷っている。帰ってくるのは予定では今月のはずだけど案の定なんの音沙汰もない。
早紀と名前を呼ばれると心配そうな彼の顔が目に入って胸が痛んだ。
ごめんと笑ってコーヒーを飲んだら携帯が鳴った。ピリリとなる携帯の画面にはあの三文字。何度も電話しようとしたけど発信ボタンが押せなかった。ずっと待ってた彼からの着信。
心よりも先に手がボタンを押していた。
携帯を耳にあてるともしもしと懐かしい声が聞こえた。泣きそうになったから慌てて席を外した。
ユウトと呼ぶとと早紀と返してきた。
ずっと聞きたかった愛しい声。
明日の夕方そっち着くからと言うと家におってと付け加えた。
うんと言えない私を察して一拍おいてからじゃあと言ってユウトは電話を切った。
――どうしよう。
彼になんて説明すればいい。
ていうか私はこの期に及んでユウトを選ぶの?
辛いとき支えてもらったのは紛れも無い彼なのに?
そんなことできる?私を100パーセントの優しさで包んでくれた彼を裏切るようなこと。
このことを人に話せば100人中100人が彼を推すだろう。だけど私は迷っている。
いいや、迷っているのは彼かユウトかじゃなくて、彼になんて説明するか。
やっぱり元カレが好きです→はいさようなら
たったそれだけ言えたら済むことなんだろうけど、そんな彼の心をナイフで突き刺すようなこととてもじゃないが言えない。
自分でもとんでもない偽善者だなあと少し可笑しくなった。



