見て、これと彼が差し出してきたのは付き合って初めて二人で遊びに行ったときの写真だった。まだ二人の間には照れなのかなんなのか、青い距離があった。
懐かしいといいながらパラパラと写真をめくっていく。

彼と過ごした二年はいろんな思い出が出来た。彼はアクティブな方で私をいろんなところに連れて行ってくれた。そのたびに沢山の写真を撮ってこうしてプリントアウトして見せてくれる。そんなマメなところも好きだなあと思いながら、写真に思いを馳せていた。


就職した先の会社で出会った彼は私の一つ先輩でいわゆるデキル先輩だった。
残業している私に声をかけてくれたり、ご飯に誘ってくれたり付き合う前からマメだった。付き合ってからも一番に私のこと考えてくれて嬉しい反面、いまだに慣れない自分もいる。とにかく思いやりのある優しい男なのだ。



来月、プロポーズするから返事考えておいてと、コーヒーを飲みながら彼はまるでおはようというくらい自然にそれを発した。
びっくりして固まっていると、彼は笑いながら早紀はそんなつもりない?と尋ねてきた。
ないと言えば嘘になる。
だけど手放しで喜べないのはきっとあの約束にまだ少し期待してるから。



彼と出会う一年前。私には付き合っている人がいた。大好きで大好きで、初めて切羽詰まるくらい人を好きになった。その彼は今の彼とはまるで正反対な人だった。常に自分の思う通りに生きていて、まずは自分という考えの人だった。
だけど決して他人に嫌悪感を抱かせない人で、それはきっと彼の発する言葉や行動に筋が通っていたから。そんなところに私も惹かれたんだ。

そんな彼はその通り自分の夢を追いかけてあっという間に私の前から姿を消してしまった。