悪魔の熱情リブレット


「君は僕のものなんだ。誰にも渡さない」

強くアウレリアを抱きしめる。

「私は誰のものでもないの!放して!?」

アンドラスの腕の中でもがくも、効果は全く無かった。

「放さないよ。放したら君は逃げるでしょ?」

震えているような声に、自分が悪者のみたいに思えてしまう。

「だって、思い出せないんだもん!あなたのこと、他の皆のこと…」

言っていて悲しくなってきた。

なぜだか、思い出せないことが辛い。

「…きっと、人違いなのよ。私にはあなたが言うような前世はないの」

彼女の口から零れた言葉にアンドラスは激怒した。

「そんなわけないさ!!君はティアナだ!その事実は神も天使も悪魔も全員知っている!!」



「でも!!私は知らないわ!!」



突き付けた真実。


「私は、あなたを知らない…」

繰り返し言い聞かす。

自分と、彼に。


「嘘つき。君は僕を知ってるよ」

「どういうこと…?」

目を丸くするアウレリア。

アンドラスは秘密を打ち明けるように囁いた。

「…僕は…天使だよ。君をずっと見守ってきた、天使…」