悪魔の熱情リブレット


「しゃぶりますか?」

そっと自分の指を差し出すシルヴェスター。

ティアナは「いらない」と首をふるふるさせる。

「そうですか…」

全力で拒否され、どこと無く寂しそうに見えるシルヴェスターだった。



 それから数分後、外で物凄い轟音がした。

荒れ狂う風の音に響き渡る正体不明の生物の鳴き声。

「ヴォラクのお出ましか」

家の中にいた彼らは外に出て、やって来た悪魔ヴォラクを出迎えた。

ティアナはヴォラクを見て息を呑んだ。

それは巨大な双頭のドラゴンだったのだ。

とっさにシルヴェスターの陰に隠れる。

「早かったねヴォラク。さすが暇悪魔」

「暇じゃないよ~!決闘してたとこだったのに、よくも邪魔してくれたねアンドラス~!」

厳めしいドラゴンには似つかわしくない可愛い声が返ってきた。

ティアナは不思議に思い、よくよくドラゴンを見る。

すると、ドラゴンの背中から金髪の少年が降りてきた。

「で?用は何~?」

金の髪に青い瞳。

背中には白い翼を生やした可愛らしい少年。

それが本当の悪魔ヴォラクだった。

双頭のドラゴンはヴォラクが移動する時に乗る彼のペットだ。

笑顔のヴォラクが自分をじっと見つめているティアナに気づき、話し掛けようとした時だった。