上手く泣き止ませた上に「ママ」というポジションまで獲得したシルヴェスター。
これでティアナの警戒心も少しは和らぐだろう。
そんな時、突如聞こえた情けない音。
「お腹すいた…」
そう、人間の腹はどんな状況でも空腹なら鳴る。
「ああ、朝の食事ですか…。主よ、どうします?自分は料理は、ちょっと…」
悪魔は人間の食べ物など口にしない。
ゆえに料理もしない。
空腹感など起こらない彼らは何も食べずとも生きていけるのだ。
「ママなんだろう?シルシルが用意しなよ」
からかうアンドラスにシルヴェスターは真面目に言い返した。
「料理を覚えたら自分が食事の支度をしますが、今はまだできません。それから、シルシルはやめて下さい」
「怒るなシルヴェスター。冗談だ」
面白そうに笑いながらアンドラスは大声を上げた。
「誰か!!ヴォラクをここへ呼べ!!」
アンドラスの大声は魔界にいる彼の部下に届く。
アンドラスがどこにいようと、部下達の頭の中にははっきりと聞こえるのだ。
主の絶対命令が。
そして忠実に役目をこなす。
それが彼らの仕事だ。
「直にヴォラクが来るだろう。それまでシルヴェスターの指でもしゃぶってなよ」
アンドラスの言葉にシルヴェスターは自分の指をじっと見つめた。



