悪魔の熱情リブレット


ベリアルはその傷口から零れ出る血を指で掬い、舐めた。

「うむ…いつ味見しても其方の血は甘い…」

うっとりとした表情。

ベリアルは我慢できず、噛むように傷口の血を吸い始めた。


「くっ、悪魔っ…!!」

吐き捨てるようなシルヴェスターの罵りに、ベリアルは笑った。

「其方も同類だろう?もしや、まだ『人間』のつもりなのか?」

シルヴェスターは唇を強く噛んだ。



そう――。

ベリアルの言う通り彼は昔、人間だったのだ。



 今から数百年も前のこと。

奴隷の子として生まれたシルヴェスター。

当時は名前などなかった。

シルヴェスターの名はベリアルが与えたものだ。

そして、現在の彼の容姿もベリアルが授けたもの。

人間の頃の彼は、肌は浅黒く、髪は赤毛で瞳の色は青だった。

母親が黒人奴隷。

父親は白人の買い手。

主従関係の二人の間に生まれたシルヴェスター。