彼のその真剣な眼差しに、ティアナの心は揺れ動いた。
ライナルトが馬から降りて近寄ってくる。
「あの…何で私を天使って呼ぶの?あなたは、私のこと悪魔だって思わないの?」
「え…?」
彼女は悪魔なのか。
ライナルトは少女の澄み切った青い瞳を直視し、結論を出した。
「君は悪魔じゃないよ。その汚れのない瞳は悪に染まっていないから」
柔らかく微笑む騎士に少女もつられて笑顔になる。
「正解!私、悪魔じゃないの。でもね、天使でもないよ。私はティアナ。普通の人間」
そして付け加える。
「悪魔に育てられた…ね」
悲しげな表情になった少女。
ライナルトは少しでも元気づけたいと思い、申し出た。
「何か悩み事があるのら、俺が聞くよ?その方が楽になる」
ティアナは考えた。
アンドラスはいない。
シルヴェスターも来ない。
(大丈夫かな…?)
ライナルトから悪意は感じられない。
人を安心させる雰囲気を纏った彼。
「なら、少しだけ…」
こうして二人は眺めの良い町外れの高台に行き、そこで数時間過ごした。



