悪魔の熱情リブレット




 天への祈りは日々の日課。

地獄でアンドラス達が激突している間、ティアナは今日の祈りを終えて教会から降りてきた。

大時計の音が響き、九時を告げる。

「まだシルシル戻ってないかな?」

考えながら歩いていると、遠くで蹄の音がした。

(え?嘘!?誰か来るの!?)

確実に近づいてくる馬の足音。

(隠れなきゃ!)

小さい頃の恐怖を思い出し、ティアナは家に向かって駆け出した。


「君は…天使!」



(あ…この言葉…まさか…)


彼女は立ち止まり、ゆっくりと振り返った。

そこには馬に乗った背の高い騎士。

「あなたは…?」

少女の問い掛けに彼は兜を脱いだ。

白い肌に、焦げ茶色の髪。

翡翠色の瞳が目の前のティアナをしっかりと見つめる。

「俺はライナルト。二年前、君と森の入り口で会った」

「やっぱり、あの時の男の人!」

ティアナは驚いて目を丸くする。

「俺の天使。君を助けに来たんだ。ここは悪魔が住む町だから危険だよ。一緒に逃げよう?」

三日前の門前払いにもめげずに、再びここへ訪れたライナルト。