悪魔の熱情リブレット



 朝から馬を駆り、数時間かけてシャッテンブルクまでやって来たライナルト。

彼は町の入り口である石階段の前で馬を止めた。


(この先が…)


悪魔の住む世界。

そう思った瞬間、ゾクリと背筋に悪寒が走った。

(殺気!?)

感じたや否や、突如、眼前に「青いもの」が現れた。

ライナルトが「青いもの」としか認識できなかったのは、それの動きが素早かったためだ。

ライナルトはその「青いもの」に、思い切り頭を蹴りつけられた。

「グ、あっ…!」

兜をかぶっていたため直撃よりも痛みは軽減されたが、そうは言っても意識がぐわんぐわんと揺れる。


(くっ…そ…)


頭部の激痛。

定まらない視点。

驚いて走り出した馬の足に任せて、彼は為すすべもなくシャッテンブルクから離れたのだった。



「…逃げられましたか」


「青いもの」の正体、シルヴェスターが何の感情もなく呟いた。