「いやしかし、似合ってるぞ」
彼の格好はこの地方の女性がお洒落をした時のものだ。
頭に花柄刺繍の小さな帽子を被り、薄く化粧をして白いブラウスに上品な緑のロングスカート。
どこから見ても清楚なお嬢様にしか見えないシルヴェスターを、バシンが褒めたのはお世辞ではなかった。
「イジリがいがある奴だとは思ってたけど…ここまでとはね…」
アンドラスに見られたとわかって恥ずかしそうに下を向くシルヴェスター。
誰よりも何よりも、自分の主には知られたくなかった醜態。
「あ、あの…主よ!どうか…」
――女装変態野郎だとは思わないで下さい。自分は無実です。
と言おうとしたが、アンドラスに先を越された。
「シルヴェスター、ティアナが腹減ってるだろうから食事の用意急いでよ」
普段と変わりない主の態度。
「…は、はい!わかりました!」
散々嫌みを言われて茶化されるかと覚悟していたが、そうではないらしい。
「ああ、それから…」
アンドラスは楽しそうに命令した。
「今日は一日その姿でいること。僕とティアナにじっくり見られて、羞恥に塗れ悶えるといいさ…」
シルヴェスターは思った。
何で自分はこんな主に仕えているのだろうと…。



