「バシン。お前は瞬間移動してすぐにゴモリーに戻って来るよう伝えろ」
バシンは嫌そうな顔をしていたが、命令に逆らうことはできなかった。
何より、可愛いティアナのため。
彼は瞬時にシャッテンブルクへ飛んだ。
「何で、いきなり…解放する気に…なったのさ?」
傷の具合を確かめながら問い掛ける。
漆黒の悪魔は答えたくないのか、見下したようにアンドラスを見ただけだった。
「アンドラス!」
ティアナが負傷して呻くアンドラスに駆け寄ってくる。
「大丈夫?ボロボロだよ…」
「ハァ…『破壊の悪魔』の名が、泣くね。…格好悪いから、見ないでよ」
いくら戦闘が得意な悪魔でも「神への反逆」で反逆軍の指揮をとった堕天使ルシファーには敵わない。
噂によると、ルシファーは天使ミカエルと双子らしい。
天使の中で一番強いミカエルの片割れ。
「まあ、勝てっこない…か」
アンドラスは自嘲した。
「でも、良かった…。アンドラス、生きてた…」
声はゴモリーだがティアナの安堵感が伝わってくる。
「は?死ぬわけないでしょ?」



