だが、わかる。
この悪魔はとても繊細で美しい。
しかし天使のような外見とは裏腹に、中身は血を好む破壊好きの悪魔だ。
油断などできない。
ティアナはこの部屋から逃げ出そうと、白い悪魔から距離をとった。
「駄目だよ」
少女の考えることなどお見通しなのだろう。
悪魔はすかさずティアナに詰め寄った。
「逃がさない」
悪魔が笑う。
その時、窓が突然開き外から何者かが侵入してきた。
「主(シュ)よ、終わりました」
それは青年だった。
青い髪に真っ赤な瞳。
人間の姿をしているが人間らしくない色彩にティアナは戸惑う。
「僕の分は残ってる?シルヴェスター」
「いいえ。主が破壊衝動を抑えられなくなると困るので、全て自分達が」
淡々と答えるシルヴェスター。
彼はアンドラスから少女に視線を移した。
「この娘ですか」
「そう。僕の暇つぶし玩具だよ」
「はい?」
シルヴェスターは聞き間違えかと思った。
否、思いたかった。
「だから、僕の玩具だよ。飼うんだ、この子をね」
「…まだ幼いですが」
アンドラスはシルヴェスターの意見を鼻で笑った。
「僕好みに育ててみせるさ」
彼は怯えるティアナの耳元で囁いた。
「僕は破壊が大好きなんだ。大きくなったら君のことも壊してあげる」



