悪魔の熱情リブレット


きつくきつく抱きしめる。

それでも襲いくる負の感情に、アンドラスは奥の手を使うことにした。

「ティアナ…」

そっと自分の前髪をずらす。

そこには彼女が綺麗と言った黄金色の瞳。


「ティアナ、僕を見て…」


きっと、今は黒い激情が少女の中で渦巻いている。

だから――。


「あいつじゃない。僕を見てよ…ティアナ」


アンドラスの切ない瞳の輝きに魅せられる。

そしてゆっくりと、彼女の心から闇の支配が消えていった。


「あ…ア、ン…ドラス…?」

赤い光は薄らぎ、通常の体に戻った。

「ティアナ?落ち着いた?」

頷く彼女に安堵し、前髪を直す。

これ以上は見られると危険だ。

「復讐したい気持ちは…わかるけど、ティアナの魂が…犠牲になるのは、頂けないよ」

「…うん。あっ、傷…!」

ティアナは全身傷だらけのアンドラスを心配そうに見た。

「私の、せいだ…!ごめんなさい!ごめんなさい…!」

泣きじゃくるティアナをボロボロの体で疲れたように抱きしめる。