「そんなの、冗談じゃない!!ティアナ!!」
それ程離れてはいないが、声を大にして彼女の名を呼ぶ。
「ティアナ!!」
「お嬢ちゃん!!」
何度も叫ぶが、声ではティアナの心には届かないようだ。
激しさを増す赤い魔力。
「ニ、クイ…」
繰り返される憎しみの言葉。
呼びかけるだけでは埒が明かないと悟ったアンドラスは、覚悟を決めてティアナに近づいた。
「ティアナ…!」
「危ねー!!アンドラス!!」
バシンの忠告とともにゴモリーの体から放たれる矢のような光の熱。
「ハッ!」
剣で薙ぎ払い前進するも、すぐに次の攻撃が飛んでくる。
無数の光の刃がアンドラスを襲った。
「ぐっ!」
全てを防ぎきれるはずもなく負傷する。
しかし、痛みなど後回しだ。
「ティアナ!!!!」
彼は全力でゴモリーの体に抱きついた。
「正気になってよ!!ティアナ!!」
復讐に燃えるような瞳がアンドラスを捉らえる。
「ニ…ク、イ…ノ」
ティアナの憎しみが痛いほど伝わってくる。
しかし――。
「僕はティアナを失いたくないんだ!!」



