悪魔の熱情リブレット


「どうした?アンドラス?」

オセーがアンドラスの大声を訝しむ。

「ルシファー…。あいつだったんだ。数年前、ティアナに取りつこうとした正体不明の悪魔」

「本当ですか!?」

酒に酔って眠ってしまったヴォラクを見守っていたサリエルが驚いて会話に入ってきた。

「うん。あいつの気だった」

「あー、気づいちまったか…」

坊主頭をぽりぽりと掻きながら苦笑いするバシン。

「どういうこと?」

「いや、俺様は…実は知ってたんだ。お嬢ちゃんに入った悪魔が、あいつだって」

バシンが告白すると、アンドラスは怒りで握り拳をつくった。

「確信があったのなら、なぜ言ってくれなかった!?」

「こう見えても俺様はあいつの部下だからな。口止めされてるに決まってるだろう!?まあ、ばれちまったから、もう隠しはしないがな」

「ハッ、じゃあ君はあいつの回し者だったってこと?」

蔑むような声が吐き出される。