「飲め」
「…いらない」
彼女は顔を曇らせて首を横に振った。
「…そんなに傷ついたか?あの悪魔に『知らない』と言われて」
気にしていることを言い当てられ体が強張る。
そんな彼女の反応に意地の悪い笑みを浮かべる闇の化身。
「忘れろ」
耳に吹き込まれた劇薬は直接ティアナの思考に届く。
「あんな悪魔のことなど、忘れてしまえ…」
脳髄に溶け込む毒は少女の心を麻痺させてゆく。
「わす、れ…る…?」
「そう…。全てを忘れて、お前の魂を私に捧げろ…」
光など感じられない真の闇が迫る。
彼はもう一口酒を飲み、虚ろな表情のゴモリーの顎を掴んだ。
そして――。
「おい、見てみろアンドラス!ゴモリーとルシファーがキスしてるぞ!」
バシンの実況報告にアンドラスは飲みかけていた酒を噴き出した。
「んなもん、見てどうすんのさ!!」
「色々と勉強になるだろう?大人の恋愛だ」
「僕は子供じゃないから。ヴォラクに言ったら?」



