悪魔の熱情リブレット


「あ!アンドラス~!」

笑顔満面に勢い良く手を振ってくるゴモリー。

「は!?」

周りにいた悪魔達が一斉にアンドラスに注目する。

「おい、アンドラス!?いつからゴモリーと仲睦まじくなったんだ!?」

バシンは目玉が飛び出さんばかりに目を見開いた。

「知らないよ!あんな女!」

顔見知り程度のルシファーの寵姫にあんな笑顔で手を振られる理由がわからない。

アンドラスはゴモリーの視線から逃れるため、空いている円卓の席に座って明後日の方向を向いてしまった。

「二股ですか?」

サリエルの刺すような一言。

「は?二股?誰と誰の股を行き来するっていうのさ」

「下品なことを言わないで下さい。…ティアナとゴモリーです」

この答えをアンドラスは鼻で笑った。

「僕があのおばさんに手を出したって?」

「はい。ティアナに吐き出せない欲望をゴモリーで解消したとか…」

「生憎と、地獄の王の女に手出すほど命知らずじゃないんでね」

「そうですか?あのゴモリーの切なそうな瞳…。完璧に恋する乙女の眼差しですが…」

再度、金髪美女を見つめるサリエルに白い悪魔は「冗談でしょ」と溜息を吐いたのだった。