「どうしよう追いかける?」



直之と円香は、亮佑が去って行った

方向を眺めながら、どうすべきか

悩んでいた。





あの顔は多分、早苗絡みだろう。

でも一体何が起きた?

まさかあの大学生が?




「なぁ、円香はあの双子ちゃんと

会ったことあんの?」


「へ?ぁあ、うんと…

ないけど、さっき学祭始まる前に

立石先輩にくっついて来てて

初めて存在を知った感じ?

なんか、やっぱナエちゃんも

思うところがあるのか私にも詳しい

話は避けてたから」




ふぅーん、、と声を立てた直之は

あいている右手を顎の下におき、

軽く首をかしげた。





もしかすると。

もしかして??




「なーおーゆーきぃー?

何考えてるの?ねぇ、1人で勝手に

考えるのやめてよー!

それより亮佑!見失うよ?

追いかける??」



繋いだ手をぶんぶん振って

円香必死のアピールタイム。

だが、やっと慣れた手は解かれた。




急に温もりが消えた右手。

え?と顔を上げる。



「ごめん円香!

俺ちょっと確かめたいことがある!

わりぃが、亮佑頼んでいいか?!」




急に何を閃いたのだろう。

直之の顔は真剣そのもので、

円香は勢いに呑まれ首を縦に振る。




「ごめん…亮佑は、大事な友達だから

放っとけないんだ。茶道部、また後で!」



ごめん!と両手を合わせ頭を下げる。

その姿に、円香はふぅっと息を吐いた。




直之はそういう奴。

大事な友達を放っとくなんて、

そんなこと出来ない奴。




解かれた右手は寂しいが、

今はそんなこと言ってる場合じゃない。




「亮佑は任せて!

直之は、直之にしか多分出来ないことをして!

なんかあったら連絡忘れないでよね」





深く頷いた直之。

ニカっと笑う円香。

そうして、2人は別々の方向に走り出した。