「……………みた?」
「……うん」
直之と円香は、ちょうど
円香の友人が所属する茶道部に
向かって歩いている途中だった。
もちろん手は繋いだままで。
最初こそ、手汗が…!とか、
心臓バクバクというかドコドコ?レベルで
直之に伝わりませんように…!とか、
知ってる人に出会いませんように!など
円香の心中はパニックを起こしていたが
慣れとは恐ろしい。
もはや堂々と手を繋ぎ、
むしろ繋いだ手のぬくもりが
心地よいとすら思う。
どうせ全校生徒200人強の学校だ。
生徒全員顔見知りのようなもので、
いまさら知り合いに会いませんようにと
願ったところで無駄だと気が付いた。
そんな、どこからどう見てもカップルな
2人が目撃したもの。
いや、見てしまったと言うべきなのか。
亮佑が今にも泣きそうな顔で、
廊下を虚ろに歩く姿だった。