しれっと言ってみる。

少し傷付いたような顔に

罪悪感さえ覚えた。




家を出る前に鏡の前で

素直になれるように何度も

練習したのに。

待ちきれなくて、すでに4回も

ばぁちゃん家に来ていたのに。




顔を見た瞬間、そんなのは

吹き飛んでしまって

今はどうやって声をかければいいか、

どうしたら自然に触れ合えるか、

分からなくなってしまった。




「明後日までいるんだろ?」




ばぁちゃんが、空になった

菜々子の湯呑みにお茶を足す。




「えぇ。亮佑にどうしても早苗ちゃんの

お姫様姿が見たいって

ワガママ言われちゃったんだもの。

連れて来ないわけにいかないじゃなーい?」




――ニヤニヤニヤニヤ。

菜々子と直之、円香にばぁちゃんまで

2人を交互に見ながらニヤニヤした。

亮佑と早苗は顔を真っ赤にして下を向く。




「んもぅっ、可愛いんだからー!」


「もぉ、嫉妬しちゃうー!」




亮佑の両腕に、そう言いながら

菜々子と円香が張り付いた。

ちらりと直之を見ると、

少しだけ不満顔。早苗は不満顔全開で

円香と亮佑を交互に睨みつけた。




そんな顔されたら悪戯したくなるじゃない。

ナエちゃんてば、素直じゃないんだから。




そんなことを思い、亮佑の腕に絡めた手に

少しだけ力を込める。