「なにを…!!」
猫かぶりはやめて
そろそろ本性を晒してやろうかと
思った早苗だったが、
陵介が耳元で囁く。
「ごめん、あと数秒我慢して」
はぁ?なにそれ?!
鳩尾に拳を入れてやる、と
決心したが、実行前に
手が離れ自由の身になった。
「ごめん、非常事態だったから」
「こういうの迷惑なんです!
陵介さんにだって彼女いるんでしょ?」
苦笑いする陵介は、
胸の前で手を合わせ
ゴメンねと詫びた。
イケメンな年上大学生の仕草に
キュンとする自分に腹が立つ。
だがおかげで少し冷静になれた。
「…訳ありですか?」
「うん、その通り。
実は俺の彼女はこの学校にいるんだ。
でも、ちょっと今トラブっててさ。
…悪いんだけど早苗ちゃん。
今日一日…いや、この数時間だけ、
俺の浮気相手になってくれない?」
そして陵介は、
驚くべき話を続けた。

