「早苗ちゃん?」


「あっ、すみません!

陵介さんは?付き合っている人

いないんですか?」




ついつい黙り込んで考えてしまった

早苗に、陵介は微笑みながら言う。




「俺?…花鈴たちには内緒だけど

いるよ、まぁ、一応ね」




じゃあなんで陵介は、

彼女とではなく早苗と学祭を

回っているのだろうか。




ふと思いたった疑問を

口にする前に、早苗は急に

陵介に肩を抱かれた。




「ちょ…!!」




校内の、しかも学祭中で

人の往来激しい中庭で

突然肩を抱かれた早苗は混乱した。




ちょうどこれから中庭では、

吹奏楽部の演奏が始まるというのに。




確か吹奏楽部はカズマーズと踊る。

円香は劇と練習時期が被って不参加だが

もし皆を引き連れて

見に来ていたら?

そして今の状況を見てしまったら

完全に勘違いされてしまう。




円香&直之2人っきり作戦のことなど

すっかり頭から飛んでしまった早苗は

亮佑に見られていたときの、

最悪な結果を想像して青ざめた。

慌てて手を払いのけようとしたが、

陵介は余裕の表情でかわす。