笑顔で手を振りながら去って行く双子。

その後ろを、微妙な表情のまま

去って行く早苗。




見送る亮佑の顔色はみるみる青ざめ、

ナツは亮佑の胸中を思った。

菜々子は双子の可愛らしい外見に

すっかりハマってしまったらしく、

「立石家って美男美女しか産まれないのかしらぁ。

羨ましいわぁー!」などと

呑気に零している。




「亮ちゃん…」


「あ、あれが立石の妹達かぁ!

母さんの言うとおり美少女だな!」




無理して笑っていることが分かる。

だけどナツにはかける言葉が見つからない。




「俺、ちょっとトイレ行って来るわ!」




そう言い残し、トイレとは逆方向に

走っていく亮佑を、ナツは見送ることしか

出来なかった。