菜々子を待つ間に、亮佑から着信があった。
つい最近、早苗や樽澤にせっつかれて
渋々携帯電話を購入したのだ。
慣れていないので、基本的に
相手からかかってきた電話を
取ることしかできない。
鞄から慌てて携帯を取り出し、
通話ボタンを探す。
「もしもし、亮ちゃん?」
『あ、今から俺合流するよ。
今どこにいる?』
「亮ちゃん、早苗や直之君たちと
回ってるんじゃないのかい?」
てっきりそうだと思っていたのだが。
簡単に事情を説明され、勘のいいナツは
大体の状況を理解した。
立石の妹たちが早苗にぞっこんなのは
なんとなく理解していたが、
もしかすると、もしかして。
早苗と亮佑を引き剥がす気なのだろうか。
立石の妹ならば有り得ない事でもないな、と
あの夏の一件が頭をよぎった。
合流場所を決めたころ、
菜々子が満面の笑顔でナツに手を振りながら
駆け寄って来た。
この笑顔は何年、何十年経っても変わらないな
とナツは思う。
電話を切り、亮佑からの着信があり
今から合流する旨を伝えると、
菜々子も喜んで一緒に合流場所に向かった。