「そういえば…

菜々子さんとナツばぁ、何かあったの?

別行動って…」



円香は話題を変えようと、

明るく言ったつもりだった。

だが、円香の発言に二人は

苦い顔で押し黙る。

さっきより空気が重く感じる。



「ま、まぁ、ほら。

ナツばぁちゃんぐらいの歳になると

トイレが近くなるんだよ!

長い間トイレに行かずに劇を

見てただろ?菜々子さんは付き添いで」



直之は顔をやや引きつらせながら言う。

瞬時に嘘だと分かったけれど、

円香はそれ以上追及するのをやめた。

触れてはいかない、いや、

触れて欲しくないのだろう。



もしかしたら菜々子がまた

暴走したのかもしれないと、

円香は想像だけで納得した。



「じゃあ、俺は二人に合流するから。

また後で会おうな」



亮佑はそう言って、

菜々子とナツに合流するため

携帯を開いた。



「え?本当に行くの?

このまま三人で回ろうよー!」


「ばぁちゃんにばっかり

母さんの世話させておけないし。

悪ぃけど、二人で回って」



亮佑は去り際に直之に

軽く目配せをした。

余計な事をするな、と言いたかったが

直之は不器用な亮佑なりの配慮と理解し

「おう、また後で」と亮佑を見送った。



円香はぶぅぶぅ文句を言いたそうな

顔をしていたが、亮佑があっさりと

去って行ってしまったので頬を膨らませ

亮佑の後姿を見送る。