「円香の宝石泥棒役が気になる」
「台詞あんまりないけどね」
「いや、円香が泥棒って想像つかない」
「そう?全身真っ黒で武装してるだけよ」
「武装すんの?!
うわ、ますます気にな…る…」
亮佑は早苗の強い視線を感じて
言葉を切った。
フンっと明後日の方向を見る
早苗が、なんとも可愛らしい。
「え?もしかして…やいて…ぐぇっ」
「そんな訳ないでしょ。
さっきから調子に乗りすぎ!!
次はその首をへし折るわよ」
強烈過ぎる照れ隠し。
亮佑は早苗に見えないように、
下を向きながら緩む口元を押さえた。
まったく、どMな男である。
話しは済んだとばかりに
早苗は立ち上がって戸口に立った。
さっさと出て行けということなのか、
亮佑はそう思って慌てて部屋の外に出た。
早苗が、少し寂しそうな顔をしたのは
おそらく気のせいということにして。