少し移動しようか、という

話になったので四人が

校舎の中に入ろうと動き出すと、

遠くから「おねーちゃん!」と

声が聞こえて来た。



直之は首を巡らせ、

紺色のワンピース姿の

双子を発見した。



二人はニコニコしながら、

早苗めがけて猛ダッシュだ。

早苗は飛びつかれるのを寸前でかわし、

双子が伸ばした両腕は空を切った。



「「お姉ちゃん、舞台お疲れ様でした」」



息もぴったりに双子は言った。

円香は双子の顔を見て、

朝、教室の前で立石と共に居た

早苗の異母姉妹だと思い出す。



「花梨ちゃん、花音ちゃん。

二人とも舞台見てくれたの?」


「「もちろん!」」



興奮気味に首を縦に振る。

二人の動きがぴったり過ぎて、

直之は笑いを必死に噛み殺した。



「劇が終わった後、お兄ちゃんに聞いたら

お姉ちゃんは先に出て行ったと聞いたので

あちこち探しました。

ねぇ、一緒に学際回ってもいい?」




どちらが花梨でどちらが花音か

さっぱり区別がつかない一同だが、

双子との片割れが早苗の腕に手を回し

甘えんぼモード突入中だ。



「早苗、俺たちは別にかまわないけど…」



気を使って言いかけた亮佑だが、

双子にキッと睨まれてしまった。

何故?!と直之に視線で問うも、

直之も円香と視線を合わせて驚いた顔をする。




早苗は双子の視線に気づかなかったようで、

三人の驚いた顔に不思議そうに首を傾げ、

双子に視線を戻した。



「花梨ちゃん、花音ちゃん。

悪いけど、あたし

今日は大切なお友達と一緒なの。

今度お家に遊びに行くから、今日は

遠慮してもらえないかしら」



少々困った顔で早苗が言う。