くそ、と呟きながら立石は
すぐ隣にいる早苗に声をかけた。
「心配するな、お兄ちゃんが
なんとかしてやるからな!」
頼もしいお兄ちゃんの横顔からは
王子オーラが大放出で、
台詞と相まって客席からは
ピンク色のため息がこぼれている。
「すっげーなぁ、お兄ちゃん」
直之が感心した風に呟き
菜々子をチラリと見ると、
菜々子もとろんとした顔で
舞台を見つめていた。
「亮佑、やばいんじゃないか?
早苗ちゃんだけじゃなくて
お母さんまで立石にメロメロだぞ」
「なんで早苗も立石にメロメロって
ことになってんだよ!
むしろ嫌ってるし!」
亮佑と直之が喋っている間に
いつの間にか円香が兄妹側についていた。
なぜ?と思う間もなく、二人を
縛っていたネクタイを円香が外し、
円香と兄妹が再び犯人に向かって
突撃していく。本当に勇ましい。
「とりゃぁ!」
「ぐぇぇぇぇ」
「あちょー!」
「喰らえ!お兄ちゃんアタック!!」
本当によくわからないが、
円香と兄妹は犯人を叩きのめした。
そして再びセットが変わるのであろう、
照明が落とされ舞台にいた人々は
舞台袖へと引っ込んでいく。
「結構荒業な劇だな」
「つーか…いつの間に円香は
立石と早苗側についたんだ?
拳銃もってぶっ放すぞとか
言ってなかったか?」
残る疑問に首を傾げながら、
亮佑と直之は再び照明の点いた
舞台へ視線を戻した。

