「どうしよう、お兄ちゃん。
怖いよぉう」
いや、早苗は全然怖がっていない。
むしろ笑いを堪えているように見える。
「安心しろ、お兄ちゃんが付いてる」
実際に二人がこういう現場に遭遇したら
きっと立場が逆転するに違いない。
亮佑にはその様子がはっきりと
思い浮かんで、吹き出しそうになった。
「やいやい、ねぇちゃん。
早くしろっていうのが分からねぇのか」
「やべぇ、ボス、警備員だぁ!」
「なんだとぅ?よし、おめぇら
あんなの吹っ飛ばしちめぇ!」
その言葉で部下が全員動く。
和馬は「今だ!」と叫んで立ち上がり
近くにあったマネキンの腕を外して
犯人に殴りかかった。
早苗も、マネキンのもう片方の腕を
外して兄に続く。
なんて勇ましい兄妹だ。
そうして犯人をぼっこぼこに
殴った兄妹だったが、円香が天井に
向けて一発打った。
早苗と和馬は、他の部下により
売り物であるネクタイで縛られた。
ぁあ、そんなに二人を密着して
拘束しなくてもいいのに。
「おめぇら…舐めた真似しやがって」
黒ずくめA、もといボスがゆらりと
立ち上がる。そして、レジ係を人質に
客席に向かって吠えた。
「次、何かしてみろ。
こいつの頭をぶっ飛ばすぞ!」
「そうだそうだ!ぶっ飛ばすぞ」
なぜか円香が続く。

