そんなことを言っている間に劇が

再開した。デパートの場面だ。

ということは、円香の出番も

間もなくだろう。




亮佑は、和馬と母に心を

乱されていたが、実は照れ臭くて

直之に言っていないことがある。




それは、亮佑が夏休みにばぁちゃんの

家にいたころ、樽澤さんの運転で

大型スーパーに行ったとき。

早苗が買った、ベルト通しにリボンが

ついているショートパンツを

早苗が舞台上で履いていることだ。

あのショートパンツは、最初に

亮佑が発見し、早苗が気に入って

買ったもので、亮佑としてはなんだか

嬉しくもあり、照れ臭くもあり、

早苗のデレをこんなところで見られて

ちょっと幸せだった。




舞台の早苗は、ステージを大きく移動し

ネクタイを探す演技をしていた。

横にピッタリ張り付く和馬が

気にくわないが。




突然、そんな二人のいる

ネクタイ売り場に、円香たち

黒ずくめの強盗団が現れた。

円香は端からみても分かるほど、

ガチガチに緊張している。




「やいやい、俺らは強盗だ!

レジの中の金を寄越しな!」




わざわざ強盗を名乗りながら、

黒ずくめAがレジ係役の女子生徒に、

水鉄砲を黒く塗ったのであろう

拳銃を突きつけた。

怯えるレジ係にさらに加える。



「早くしな、お嬢ちゃん。

もし、警察なんて呼んだら

ただじゃあおかねぇ」


なぜ時代劇調になるんだ。

その間に円香たち残りの黒ずくめが

早苗たち客に拳銃を突きつけて脅し

ステージの端に集めた。