早苗は、舞台袖でガチガチに緊張していた。

その横で、全身真っ黒に武装した円香が

リラーックス!リラーックス!

お客は全員かぼちゃだよ!

掌に人って書いて飲み込むといいよ!

なんて、アドバイスをしている。




「客が全員かぼちゃだったら

演じてるあたしたちかなり滑稽よね」


「あはは、ナエちゃん節炸裂〜!」




真っ黒に武装した円香が

キャハキャハ笑う姿がなんだか怖い。




ビィーと鈍い音がして、

反対側の袖で待機していた

司会役の2人が幕の外に出た。




劇の簡単な説明と、鑑賞時の注意などを

さらさら言うと、女子からは

奇声に似た叫び声とブーイングが

立て続けに起こる。

おそらく、立石ファンクラブの女子たちだ。




「あんな男のどこに

キャー、立石先輩ステキー!

なんて要素があるのかしら」


「ぇえー、ナエちゃんには

立石先輩の良さが分からないの?

あの爽やかさ、文武両道でイケメン。

申し分ないじゃない」




ほぼ同じタイミングで

同じ父親から生まれた妹たちも

同じようなことを言っていることを

早苗は知らない。




もう一度ビィーと音が鳴ると

ゆっくりと幕が開く。