ビィーと鈍い音が体育館に響く。

それと同時に、ステージに下りていた

赤い幕の中から、司会者らしい生徒が

2人出てきて、スポットライトを浴びた。




拍手が巻き起こり、花音と花鈴も

ステージに注目した。




『本日は、当校演劇部オリジナル劇

"ヘンゼルとグレーテル"にお越しいただき

ありがとうございます。

当劇の、企画、脚本、演出は

演劇部部長立石 和馬先輩です!』




キャーっと最前列で拍手と悲鳴が起きた。

おそらくファンクラブの面々だろうが

双子はうんざり顔だ。




「あのお兄ちゃんのどこがいいのかしら」


「ただの変態、ストーカー、盗撮魔だよ」




妹たちからの評価は最悪だ。




そんなファンクラブの3列後ろの席に、

亮佑と直之は座っていた。

勿論、お化け屋敷で騒動を起こしている

菜々子とばぁちゃんの席もある。




花音が亮佑を発見すると、

花鈴は鋭い視線を投げつけた。

亮佑は怒っているのか呆れているのか

よく分からない顔をしていて

隣にいる直之は亮佑を

冷やかしているように見えた。




「見てなさいよ、今日という日を

一生忘れられない日にしてやる!」




低い声で花鈴が呟く。




司会役の生徒たちは、上演中の

マナーや約束事について述べた。

ファンクラブの歓声も禁止らしい。

少しだけブーイングが起きる。

苦笑いで受け流し、もう一度

ビィーと音が鳴ると

司会役の生徒たちはお辞儀をし、

拍手の起きる会場に満足したように

幕の中に引っ込む。




そして、舞台の幕が上がった―――。