「ぁーあ、もうお姉ちゃんいないや」




花音の呟きと共に、花鈴はため息をつく。




準備に手間取ってしまったため

2人が着く頃には

学祭が始まってしまっていた。

真っ先にお好み焼きの屋台に行ったが

すでに早苗の姿はない。

劇の時間まで、あまり時間もない。




2人が体育館に向かうと、

すでに開場していたので

人々の列に並び席に座った。




「上手くいくよね?」




薄暗い体育館の中で、

花音は花鈴に問い掛けた。




「上手くいってくれなきゃ困るわ。

せっかく苦労して役者を揃えたんだし。

上手くいくって、絶対」


「だといいんだけど…

お姉ちゃんに通用するかなぁ」




2人の立てた作戦が上手くいかなければ

2人に待っているのは

認めたくない現実だ。




「あたしたちが信じないで

誰が信じるのよ!

それとも花音は、あんな男が

お姉ちゃんに相応しいとでも言うの?」


「まさか!それは絶対にない。

あたし、あんな男認めない!」




強い決心が、2人にはあった。

――絶対に姉を取り戻す。




その、盲目であるが故の

強い決意と絶対的自信。




「こんなこと言うのは

悪いことだと思うけど、

もうニセモノ家族の役目は終わったのよ。

お姉ちゃんはホンモノの家族と

一緒に暮らすべきだわ」




花鈴の言葉に、花音は力強く頷く。